この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
サービス業を営む会社から、役員の1人が約1年前から架空の広告代を経費計上しその金員を横領し、また、多額の交際費をプライベートのために支出した(総額1000万円程度)ことが発覚したため、刑事・民事の責任を問いたいとの相談を受けました。刑事告訴の可能性、民事責任を追及した場合の支払能力等を聴取し対応を考えました。
解決への流れ
この事例では物的証拠が少なく、会社の金銭管理もやや杜撰であったため刑事告訴は難しいと想定され、また、業務上横領に及んだ役員は横領した金員をほとんど遊興費に使ってしまっているようであったため損害賠償請求をしたとしても全額の回収が難しく、裁判が長引けばさらに散財されてしまうと思料されたため、早期に代表者と同行し当該役員と直接面談し、責任を認めさせた上で現在有している金員の返還と今後の分割弁済、分割弁済に対する連帯保証を求め、合意に至りました。
業務上横領があった場合、会社は当然刑事・民事両方の責任を問うことを考えます。もっとも、全てが上手くいくケースはあまりないため、ここで重要なのが会社の優先順位です。刑事罰を与えることを最優先に考えるのか、横領された金員を返還されることを優先するのか、また、時間を要してもできるだけ多くの金額を回収したいのか、金額よりもできるだけスピーディーに決着したいのか、時間をかけると逃げられる恐れはないかなど、色々な要素を考慮して優先順位を決めていきます。私はこの時の会社の優先順位を決めるための弁護士のアドバイスは極めて重要だと考えています。刑事告訴をしたいと言っても、証拠が十分に揃っていなければ警察は受け付けてくれません。また、刑事告訴が受理される可能性がある事案でも、刑事告訴は受理されてから1年以上警察に放置される(放置というと言い方は悪いですが、警察も他の事件を沢山抱えているのでどうしても着手するまでに時間を要します。)ことは珍しくないので、それを待てるのかという問題もあります。民事の損害賠償についても、裁判をするのが最も厳格な手続ではありますが、訴訟提起までに時間がかかるのでそれまでに逃げられてしまったり、横領した金銭を費消されることもあります。そうであれば裁判にする前に交渉で多少減額してでも早期に回収することを目指した方が良い場合もあります。こういった考慮要素をいかに分かりやすく正確に伝えられるかどうかが弁護士としての腕の見せ所ではないかと思います。